皆既日食〜神々しい一瞬の現象〜(第3回 10月2週)

 1999年8月11日、ルーマニア・ブカレスト。この日、初めて皆既日食を目にすることができました。
 太陽の前を月が横切ると、太陽が月によって隠されます。これが「日食」です。太陽と月と地球が一直線に並ぶときに起きますが、月の通り道が若干傾いているので、新月時につねに日食が見られるわけではありません。 また、月は楕円軌道で地球の周りを回っており、地球も楕円軌道で太陽の周りを巡るので、見かけ上の月や太陽の大きさは変化します。このため日食は、皆既日食・金環日食・部分日食の3つのタイプに分けられます。
 見かけ上、太陽が月より大きいケースでは太陽は完全に隠れず、太陽の周辺部が月のまわりからはみだしてリング状に見えます。これを金環日食とよんでいます。逆に、月の方が太陽より大きく見えるケースでは、太陽は完全に月のかげに隠されてしまいます。これを皆既日食といいます。また、太陽の一部のみが隠されると部分日食になります。
皆既日食や金環日食は地球上の限られた地域でしか見ることができません。そのため、遥かヨーロッパまで足を運んだのです。
 午後2時過ぎ、太陽が三日月よりも細くなっています。あたりも薄暗くなり、気温も急に下がって来ました。それでも、太陽の光は強烈で、専用の日食グラスを通して見ないと目を痛めてしまいます。
 やがて、太陽の光がすべて月に隠されると、いよいよクライマックス。今まで見えなかったコロナが広がっています。よく見ると、真っ赤な炎、プロミネンスも見えています。あたりはかなり暗く、カメラのパネルの文字もすぐには読めないくらいです。太陽の左下には金星も見えています。必死にカメラのシャッターを切り、神秘的な現象を目に焼き付けます。その間、わずか2分20秒。あっという間の出来事でした。
 
 次回、日本で皆既日食が見られるのは2009年7月22日、南西諸島。あの神々しいまでの素晴らしさは文字通り「百聞は一見にしかず」です。みなさんも、一生に一度くらいは、ごらんになることをおすすめいたします。

 1999年8月11日 ルーマニア皆既日食のページへ


後日談
 原稿は掲載予定の前の週、金曜日頃に渡していました。ただ、いつも長めになってしまうため、担当の方が少し削るなどの手直しをしてくださいました。今回は天野岩屋戸の伝説は皆既日食のことだとする説がありますが、この感動的な光景を目の当たりにすると、それもうなずけます。」という一文が入っていたのですが、特に重要というわけでもなく、カットされていました
 私にとって楽しみだったのはサブタイトルです。これは100%担当者の方によるものです。掲載日には「今回のサブタイトルは何になっているかな」と思いながら新聞を広げたものです。

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