月の大きさ〜大きく感じる月の出(第2回 9月4週)

 県内各地で開かれる天体観察会にお手伝いとして参加すると、いろいろな質問が出されされます。宇宙の果てはどこかといった現代天文学でも答えに詰まるような質問から、望遠鏡の選び方まで、その内容は様々です。
 逆にこちらからよくする質問もあります。例えば月の見かけの大きさ。腕をいっぱいに伸ばしたとき、月の大きさは握り拳くらいの大きさに見えるでしょうか。それともピンポン玉くらい?まさか、五円玉?簡単な観察なので、ぜひ、ご自分で確かめていただきたいのですが、なんと五円玉の穴の中にすっぽり入ってしまうのです。
 実際、決してオーバーな表現ではなく「お盆のように大きく丸い月」が東の空から昇ってくるところをごらんになった方も多いと思います。では、月の出の頃は、月は大きくなっているとでもいうのでしょうか。
 しかし、そんなことは絶対にあり得ません。月は地球から平均して38万kmの所を回っていて、急激に近づいたりすることはないからです。けれども、地平線に近いところにある月が大きく見えることも事実のようです。とすると、大きく見えるのは、人間の錯覚によるものらしいと考えるしかないようです。(プラネタリウムでは計算上の月の大きさで投影すると小さすぎると言われてしまうため、本物より大きく映し出しているそうです。)
 これは、次のように説明されています。我々は、空を見上げると頭の上に丸い天井がかぶさっているように感じる。しかし、まん丸ではなく、地平線に近い所ほど遠く、頭の真上ほど近く感じる。(頭の真上の雲のほうが、近くに感じませんか。)だから、図のように月はいつも同じ大きさのはずなのに、地平線に近いとより遠くにあるように思え、実際より大きく感じてしまう・・・。
 地上の建物などと大きさをくらべるために大きく感じるという説やもありますが、実はまだよくわかっていないと言うのが本当のところのようです。

後日談
2000年7月16日、公民館で月食の観察会がありました。このときにも同じ質問をしてみたのですが、ほとんどの人が「月の見かけの大きさは握りこぶしと同じくらい」と答えていました。やがて、東の空から月が昇ってきました。実際に五円玉を取り出し、答えを確かめてみると・・・。どの方も不思議そうな顔をしながら何度も確かめていましたが、やっぱり穴の中にすっぽり収まってしまうのでした。
この話については、ブルーバックス「地平の月はなぜ大きいか 心理学的空間論」苧坂良二 講談社に詳しく述べられています。

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