リニア彗星 〜初めて太陽に接近〜(第18回 6月4週)

  彗星の名前はふつう、発見した順に3人までの名前が付くことになっています。群馬県内でも尾島町の新島さん、大泉町の小林さんの名が彗星に付いています。
 1983年にはIRAS・荒貴・オルコック彗星という、地球にとても近づいた彗星がありました。これは赤外線人工衛星IRASがはじめに見つけ、その後、日本の荒木さん、イギリスのオルコックさんがそれぞれ独立して発見したのです。最近では、このように、人名以外の名称を持つ彗星も多くなっています。中でも目に付くのがリニア(LINEAR)彗星です。リニアとは、以前隕石の話の時にご紹介した「地球に接近してくる小惑星を探し出すためのプロジェクト」の1つで、アメリカの MITリンカーン研究所が始めた”Lincoln Near Earth Asteroid Research project”の頭文字を並べたものなのです。

 リニアは性能のよいCCDカメラを使い、自動的に夜空を調べていきます。人間が望遠鏡を使い、星図と見比べながら丹念に新しい星を探すのに比べ、遙かに効率がよいのです。リニアによって発見された天体はたくさんありますが、その中には目的とする小惑星だけでなく、彗星も含まれています。そのうちの1つ、1999S4と名付けられた彗星が、今(2000年6月)、太陽に近づきつつあります。当初の予想では肉眼でも楽しめるくらいに明るくなると言われていたのですが、最新の情報では、どうもそれほどには明るくならないようです。しかし、彗星はそれぞれ成分が違いますし、ましてやこの彗星は初めて太陽に近づくので、明るさの予想が難しく、実際に来てみないとわからないというのが本当のところです。
 リニア彗星は、6月の下旬から7月の上旬にかけてはまだ暗いものの、明け方の東の空の見やすい位置にあります。最もよい条件で見られるのは7月下旬で、夕方暗くなってからの1〜2時間、方角は北西です。
 この彗星は私たちにどんな姿を見せてくれるのでしょうか。天候の安定しない時期ですが、その動向にぜひ注目していただきたいものです。 

後日談
 右の写真は2000年7月9日にぐんま天文台で撮影したリニア彗星(1994S4)です。
第17回で紹介した百武彗星やヘール・ボップ彗星にはかなわないものの、双眼鏡でも尾が伸びている様子が楽しめました。

リニア彗星(1999S4)

追加情報(2003.09.28)
 火星の大接近による興奮がだんだんと薄れていく中、次に注目されるのが2004年の春に肉眼彗星になりそうな2つの彗星です。
 そのひとつはニート彗星(C/2001 Q4 NEAT)といいます。これもリニアと同じく地球接近小惑星を捜索するチーム(ジェット推進研究所)が発見しました。ニートとは”Near-Earth Asteroids Tracking programme”の頭文字です。しばらくは南天にあるために日本からは見えませんが、2004年のゴールデンウィークあたりから夕方の南西の低空に見えるようになり、太陽に近づく5月中旬には、西の空に輝く肉眼彗星になるのではないかと期待されています。
 もうひとつが今回紹介したものと同じ名前を待つリニア彗星(C/2002 T7)です。リニアはたくさんの彗星を発見しているので、どれのことだかわからなくなってしまいそうですね。この彗星が太陽に最も近づくのは2004年4月末で、順調にいけば、ゴールデンウィーク前後に明け方の東の低空に、明るく尾を引く姿が肉眼で眺められると期待されています。ただ、北半球からは低空となって、条件はそれほど良くありません。
 彗星の予報は難しいのですが、このままいけば2004年の5月上旬には夕方の西の空にはニート彗星(C/2001 Q4)、明け方の東の空にはリニア彗星と、一晩に2つの肉眼彗星が眺められるかもしれません。また、南半球では4月から5月にかけて、明け方の空に2つの彗星を同時に眺めることができそうです。
追加情報2(2004.05.16)
どちらの彗星も、残念ながら肉眼で十分尾を楽しめるほどの明るさにはなっていないようです。しかし、彗星特有の尾の様子が観察できました。画像は下のリンクからどうぞ。
ニート彗星(C/2001 Q4 NEAT)  リニア彗星(C/2002 T7)

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