星雲・星団の楽しみ 〜暗さに目を慣らす〜(第16回 5月4週)

  
 ゴールデンウィーク中、ある星祭りに家族で参加してきました。昼間はクイズなどのイベントを行い、夜になると個人所有の望遠鏡でいろいろな天体を見せてくれるのです。
 最初に、ヘルクレス座の球状星団M13を見せてもらいました。大きめの望遠鏡で見ると、中心部に集まった星が一つ一つ分解して見えてきます。太陽のような星が何十万個も集まっていると思うと壮観です。続いて長男がのぞきました。なんだかぼんやりしたものがあるのはわかるらしいのですが、星の集団というイメージは感じられないようです。
 次は私のお気に入り、こと座のリング星雲M57です。今度は長男が先に見せてもらいます。ところが、彼には何も見えないらしいのです。望遠鏡が正しく向いていないのかと思ってのぞいてみると、私の目には、まるでたばこの煙で作ったようなわっかが夜空にぽっかりと浮かんでいるのがよくわかります。
 私たちが行う観察会でも、このようなことがよくあります。じつは、星雲や星団を見るときにはちょっとしたコツがあるのです。
  一つは暗い所に目をよく慣らしておくこと。瞳孔がよく開き、淡い光をとらえられるようになるには三十分程もかかるのです。二つ目はあまり目を凝らして見つめず、視野のはじっこでとらえること。これは、網膜の中央部に細かな部分や色の違いを見分ける細胞が集まっているのに対して、周辺部に暗い光を感じ取る細胞が多いからだと言われています。
 近頃はいろいろな情報が手に入りやすくなり、素晴らしい星雲・星団の写真を見る機会が多くなってきました。そのためか、先入観が強くなり、本物を見てもよく見えないと、がっかりする方が多いように思います。
 しかし、肉眼で見た光は、遙か遠い宇宙から、何千、何万年もかけて地球に届いた生の光なのです。やはり、いつの時代でも「本物の体験」は意義のあるものだと思います。

球状星団M13 リング星雲57

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