UFOと人工衛星〜人目引く明滅の正体は〜(第11回 3月2週)

 UFOというのは未確認飛行物体の略ですから、空を飛んでいる(ように見える)正体不明の物はすべてUFOと呼ばれ、宇宙人の乗った空飛ぶ円盤というわけではありません。前回では金星が騒ぎになることが多いと書きましたが、そのほかにも飛行機、ヘリコプター、気球といったものから凧まで、様々な物体が正体不明のUFOとして騒がれることがあります。また、音もなく飛んでいく人工衛星も、人目を引くことが多いようです。
 最近では携帯電話の通信のために多数打ち上げられているイリジウム衛星が、星仲間の間でも話題になっています。それは金星よりもさらに明るいマイナス8等星程の輝きを放つからです。しかも、いきなり輝きだしたかと思うと、急に見えなくなってしまうのです。
 人工衛星は太陽の光を受けて光っています。そのため、地球の影に入って見えなくなることはあっても、急に明るさが変わることはありません。ところが、このイリジウム衛星は巨大なアンテナを積んでいて、その向きが太陽と地上との間で適当な方向を向いた時に、まるでスポットライトのように輝くのです。 この衛星が一つだけならめったに見ることはできないでしょうが、同じ種類の衛星が地球の周りを66個も回っているので、一晩に一つくらいは観測することができるそうです。
 人類が人工衛星を打ち上げるようになって数十年。この間に宇宙空間に放出され、現在も地球の周りを回っている物の中には、不要になってしまった物も数多くあります。こうした不要な人工物をスペースデブリと呼んでいます。デブリは役目を終えた衛星やロケットの破片など様々です。こうした物が秒速数千キロメートルで衝突すれば、どんなに小さな物でもその被害は大きなものとなります。
 建設の始まった国際宇宙ステーションでもデブリは問題視されています。宇宙においても人間の出すゴミが問題になっているのです。



イリジウム衛星のその後と最近の話題
 イリジウム社は、50億ドルを費やして全地球規模の衛星携帯電話サービスを開始しましたが、高価な端末と通信料から利用者が伸び悩み、1999年8月には44億ドルの負債を抱え、破産法による保護を申請。そして2000年初めにはサービスを停止しました。
 その後、残されたイリジウム衛星群を買い取るという話が何度かありましたが、結局、有効な救済プランが現れませんでした。そこで衛星群は大気圏への突入により廃棄させられることになり、2002年になる予定の破壊準備はすでに進行中でした。
 ところが、2000年11月16日、Iridium Satellite LLC社がIridium LLC社の現存の資産の全てを買い取るという提案に合意したと発表されたのです。 
 このイリジウム衛星群の今後は、天文に関わる人々にとっても大きな関心事です。イリジウム衛星の通信は、電波天文学においてOH(ヒドロキシル・ラジカル)の観測に用いられる1612MHz帯と干渉してしまうため、これまでも問題となっていました。OHの観測は、彗星からの蒸発成分の分布観測や、恒星の誕生や死の観測手段なのだそうです。
また、天文ファンの間では、イリジウム衛星の通信アンテナが太陽光を強く反射する「フレア」が、天体写真の見栄えを悪くするとして嫌われてきました。一方で、明るいため都会でも容易に観測できることから、都会の天文ファンには人気のある人工天体でもありました。
 二転三転し続けているイリジウム衛星問題は、今回の買収にて最終決着と見てよいのかどうかは何ともいえないようです。

 最近の話題といえば、廃棄処分が決まったロシアの宇宙ステーション『ミール』でしょう。3月上旬に地上からの管制に従がって大気圏に再突入し、地球に落下することになっています。その落下地点としてニュージーランドとチリの間の南洋上が想定されていますが、地上に落下する確率は3%と計算しているそうです。重量が135トンもあるので、周辺各国は万が一の事態に備え対応に乗り出しているといわれています。
 この落下の直前、ミールは日本付近の上空約150キロメートルを通過する見込みで、この際日本から、ミールが大気との摩擦で発光する現象が観測できる可能性があると期待されています。これは、大気圏に突入した大規模構造物のふるまいを科学的に調べる大きなチャンスです。
 そこで日本でも「ミール宇宙ステーション地上観測ネットワーク」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げ、落下をできるだけ確実に観測するため、公開天文台やアマチュア観測家に広く協力を求め、幅広い観測網を展開する計画です。詳しくはAstroArtsの天文ニュースにも掲載されていますので、興味のある方はご覧ください。

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