金星〜勘違いのUFO騒ぎ〜(第10回 2月4週)


 この冬は、明け方の南東の空に素晴らしい輝きをした金星を見ることができました。
 金星は地球より内側を回っているため、月のように満ち欠けを繰り返しています。初めて望遠鏡でその姿を見た方のほとんどは月を見ているのではないかと勘違いするほどです。
 それ以上に多い勘違いがUFO騒ぎです。金星はあまりにも明るく見えるため、星とは思えないことが原因の一つでしょう。日の出が近づき他の星が姿を消していっても最後まで見えていることも一因と考えられます。10年ほど前には桐生の梅田でも「毎朝UFOが見える」と話題になっていました。この時は毎朝同じ時刻に見えることや晴れているときしか現れないことなどから、すぐ金星と見当がつきました。案の定、望遠鏡を持ち込んでのぞいてみると、そこには月のように欠けた形をはっきりとらえることができました。
 金星が最も明るく見える時期には、マイナス4等級にもなります。これは1等星の約百倍の明るさで、太陽が昇ってからも青空の中にぽつんと輝く姿を肉眼で見つけられるほどです。そのため、過去にも世界中で騒ぎを起こしてきました。
 例えば1913年のことです。当時のヨーロッパでは第一次世界大戦が起ころうとしている時期で、昼間の金星を敵国の飛行機と勘違いする事件が続発したのです。ロシアでは金星をオーストリアの飛行機と思いこみ、イギリスではドイツ機の領空侵犯だと言って非難しました。ルーマニアではロシアの飛行船が攻めてきたと思ってとうとう大砲まで打ち込んだそうです。もちろん、相手は金星ですから、届くはずはありませんが・・・。
 そんな人騒がせな金星も、現在太陽の方向にどんどん近づいているため、明け方の空ではそろそろ見納めです。条件よく見るためには、秋の終わり頃、夕方の西空にその姿を現すのを待つことになります。
 

2001年の金星

上の文章にあるとおり、2000年の秋には夕方の西の空に金星が見えるようになってきました。左の写真は2000年11月29日のものですが、このように細い月と並んで見える機会もあります。
 
2001年の金星は、3月中旬までは宵の明星として西の空で、また4月中旬以降は明けの明星として明け方の東の空で見ることができます。しかし、秋以降はゆっくり高度が下がっていき、12月には日の出時の高度が10度を切るようになってしまいます。

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