きれいな夜空を写真に残そう

 T.はじめに

夜空にはたくさんの星ぼしが光っています。
私の住む群馬県は「県立ぐんま天文台」ができたり、「星空憲章」が作られたりするほど、夜空のきれいな場所です。こんなきれいな星空を写真に残すことができたらいいですね。
でも、星の写真はふつうの写真を撮るよりもちょっとコツがいります。それは、星の光がとても弱く「はいチーズ」という感じでは写らないからです。カメラのシャッターを何分間も開けっ放しにしておかなければなりません。
そのため、星の写真はどんなカメラでも撮れるというものではなく、高価な「一眼レフ」というものが適しています。しかし、工夫次第ではふつうのカメラでも大丈夫。

今回は「レンズ付フィルム」を改造して星空を撮影してみましょう。

 改造レンズつきフィルムによる作例

 沈むオリオン座とおうし座
ぐんま天文台で撮影
昇るぎょしゃ座
1999年12月11日 19h00m〜 20分   桐生市自然観察の森にて

 U.作り方

1.用意するもの

 ・レンズ付きフィルム  (フラッシュのついたものは感電のおそれがあるので絶対に改造しないこと) 
 ・ドライバー   ・黒い粘着テープ    ・輪ゴム    ・黒い厚紙   ・ひっき用具
(・カメラ用三きゃく ・かいちゅう電灯 )


2.カメラの改造 (ここでは「撮りっきりコニカ超ミニ」を紹介しています)

(1)ふくろをやぶいて本体を取り出す。 (2)まわりのシールをはがし、 ドライバー を使って
  表ぶたを外す。


(3)左右もドライバーでこじあける。
  引っかかりをはずすようにする。
(4)表ぶたをはずしたところ。
  レンズが見 えてくる。


(5) レンズ部分を外す。
  この部品はあとで また取り付ける。一段下から
  外すとフィルム面が出てしまうので注意。
(6)シャッター板が見えてくるのでそれを外す。 この
  時から光がフィルムにあたっていることになる。


(7) レンズの組み込まれた部品をもとにもどし、
  表ぶたを付ける。
(8)レンズに黒のビニルテープを三重にしてはる。
  (シャッターのかわり)

光が当たらないように、使わないときは黒い袋などに入れて保管する。

 V.撮影してみよう

改造はうまくいったでしょうか。夜になったら実際に撮影してみましょう。
1.フィルムを巻き上げる。
  最初の1コマ目には光が当たっているので、4コマくらい先送りしてから撮影します。

2.改造したカメラを固定する。
  カメラの三脚にカメラをしっかりと取り付けます。 強力なゴムバンドやガムテープが便利でしょう。

3.撮影したい方向にカメラを向けて構図を決める。

4.シャッターを開ける。
  シャッター板(黒く塗った板など)でレンズの前をおおってから、黒いビニルテープをはずす。

5.露出をはじめる。
  ゆれがおさまったら、カメラに当たらないよう静かにシャッター板をどかす。
  この時からフィルムに光が当たりはじめる。

6.露出を終わりにする。
  予定時刻になったら、静かにシャッター板でレンズの前をおおい、黒いビニルテープを レンズに貼り付ける。

 W.その他

 上手に撮影できたでしょうか。撮影前後には次のことにも気をつけましょう。

(1) 星の光はとても淡く、街灯の光などにうもれてしまいます。明かりが直接カメラに当たらないような場所を選んで撮影しましょう。
(2) 写真店に現像やプリントをたのむときは、必ず天体を撮影したことを伝えましょう。
  何も写っていないと思われて、フィルムを捨てられてしまうことがあります。
(3) 改造したものは品質保証外であると書いてありますが、たいていのお店では受け付けてくれます。
(4) 自分で改造するときは、フラッシュ付きのものは絶対に使わないでください。
  高電圧の部分があり、やけどをしてしまうことがあります

(5) 家に一眼レフのカメラがある場合には、下の資料を参考にして本格的な撮影にチャレンジしてみてください。


 参考資料  天体写真の写し方  

1.用意する物   

(1) カメラ  長時間露出をすることが多いので、B(バルブ)や、T(タイム)のついているものを用意します。一眼レフが便利。
(2) フィルム   撮影目的により、使い分けるとよいでしょう。一般的には、 
☆色を重視する場合・・・・・・・・・・・・・・・・比較的感度の低い物
☆暗い星を撮るときや短時間露出で済ませたい時・・・比較的感度の高い物
☆よく使われている物       カラーネガ   各社 ISO400〜800クラス

(3) その他  レリーズ・・・ オートストッパー付き(押すと自動的にストッパーのかかる物)で、長さが30〜50cmくらいのもの。
時計・・・・・ 時刻や露出時間をはかる。通常の腕時計で十分。
メモ用紙・・・ 撮影データを記入。
懐中電灯・・・ 赤セロハンをかぶせ、露出カブリを防いだり、暗闇に慣れた目を刺激したりしないようにします。
三脚・・・・・ なるべくしっかりした物。

   

2.固定撮影

(1) 方 法 静止撮影とも呼ばれ、カメラを三脚などに取り付け、目的の天体を写すもので、天体写真の第一歩と言えます。しかし、そのテーマは多く、星座、日周運動、流星、彗星、人工衛星など、ほとんどの天体を写すことができます。
(2) 露 出  空の明るさやフィルも感度によって異なりますが、次の時間が目安になるでしょう。
また、絞りは開放か一段絞る程度が適当ですが、露出が長時間になる場合は、4より絞ることもあります。
☆星座の形や彗星・・・・・10〜30秒 (星を点状に写す。表1参照)
☆日周運動・・・・・・・・5分〜数時間

 表1 星を点像に写すための露出時間

星の赤緯
焦点距離
0° ±40° ±60°
 28mm 44秒 60秒 88秒
35mm 20 30 40
50mm 14 20 28
100mm  7 10 14


(3) よりよい作品にするには

@場 所 星の光は大変淡いので、街灯の光などに埋もれてしまいます。できれば市街地から離れた山間部で写すことがよいでしょう。それが無理だとしても、明かりが直接カメラに当たらない場所を選び、フードを使用します。
Aテーマ   ☆日周運動
 
北天以外は、わかりやすい星座や星の並びを写すとよいでしょう。
事前に星座早見盤やパソコンソフトで調べておくと見当がつきます。
例)東天  昇るオリオン   11〜12月
        〃 はくちょう  6〜7月
  南天  オリオン    
 1〜2月
  西天   沈むオリオン    3〜4月
        〃 はくちょう
  1〜2月
B構 図 ☆星座を撮る
 
まとまりを考えるか天球上の東西南北にあわせます。
※一眼レフの場合、対象によりレンズを使い分けましょう。
☆流星を撮る
 
放射点を入れると、流星が複数写ったときに価値が高まります。
バックにはわかりやすい星座を選びましょう。
北天の日周運動に重ねても、見栄えがよくなると思います。
※広角レンズのほうが確率は高くなりますが見栄えは劣ります。
☆星の動きを
 撮る
地平線(水平線)に合わせましょう。
星の動く方向や角度を考え移動方向に余裕を持たせましょう。
                         
(4) 撮影手順 風によるブレや、露出の始め、終わりのブレに注意しましょう。シャッター板(黒く塗った厚紙など)を利用して、以下のように行うとよいでしょう。
@ カメラを三脚などに固定する。
A 撮影したい方向にカメラを向けて構図を決める。
B シャッター板でレンズの前を覆ってから、シャッターを切る。
C 揺れがおさまったら、カメラに当たらないよう静かにシャッター板をどかす。ここから露出が始まる。
D 予定時刻になったら、静かにシャッター板でレンズの前を覆い、シャッターを閉じる。

3.その他
(1) 夜露や霜に注意。→意外とこれで失敗するものです。カイロを活用するとよいでしょう。
(2) 撮影テーマとともに、日時や露出時間、絞り、レンズなどを記録しておき、次の撮影に役立てるとよいでしょう。
(3) 現像、焼き付けを依頼する時に、必ず天体を撮影したことを伝えるようにしましょう。
  焼き方を指定してみるのも効果的です。

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