2001.02.24(土)〜25(日)天文観測研究講座C

最後となる観測研究講座が2月24、25日に開かれました。それに合わせて、23日の晩には観察用望遠鏡の占有利用を予約していたのですが、天気が思わしくなく、あえなくキャンセル。
翌、24日は朝から冷たい雨でした。それが国道17号から353号と車を走らせ、高山村に入る頃にはまたもや雪になっていました。日頃から晴れ男を自認している私なのですが、こと天文台、それも講座や65cmの利用となると相性がよくありません。この冬は雲男、雨男どころか「雪男」と言われそうなくらいです。まあ、講座に関してはデータ処理が中心なので、たとえ天気が悪くても行き帰りの心配をするだけです。

講座の内容は、今までに得られた星団のデータ処理を行い、HR図を描くことでした。前回にもざっと行っているのですが、今回は標準システムにまで直す作業があります。これは、地球大気や観測機材による影響を補正し、世界のどこでも通用するような標準データに変換する作業です。
具体的には
1、IRAFのDAOPHOTコマンドを用いて星団の星、それぞれについて測光を行う。
2、標準星の観測データを元に標準システムに変換する
3、星団全体のHR図を書く
わけですが、1からして大変でした。

DAOPHOTOというコマンドはいろいろな設定ができ、大変便利です。しかし、逆に言えば最適なパラメーターを決めるための作業を何度も繰り返す必要があります。今回は一次処理を施し、合成して質を高めたV,R,Iの各画像から、600個〜1000個の星を選び出し、その座標を測定して番号を振る作業から始めました。半値幅やSkynoiseなどの条件を設定して星を絞り込んでいきます。そしてその中から、近くに他の星がなく、星像の安定したものをさらに選び出し、PSF(Point Spread Function/点広がり関数)を決定する作業を行いました。PSFとは、光学系や大気のゆらぎによる劣化(広がり)を示す数値です。この関数を元に、点光源であるはずの星像の、どこまでを星の光として測定するか決めていくのです。(PSFについては星ナビ2001年1月号の田中一幸さんの連載記事にもちょうど出ていますね)
私の選んだ星団は遠距離にあるので暗い星が込み入っているため、条件に合う星がなかなかありません。数百個の中から選んだ星でPSFを決め、星像をシミュレートしても、うまくガウス分布のようになっていないのです。モニター上では確認できないような暗い星がそばにあり、邪魔をしているようです。星の選定を繰り返し、シミュレーションを重ねていくだけで、あっという間に数時間たってしまいました。何度か作業を繰り返し、天文台の方にも手伝っていただいてようやく、次の課程に進むことができました。
 今度はいよいよ測光です。といっても、コマンドを入れるだけのコンピュータ任せです。ただ、感心したのが、データの信頼性をいつもチェックする姿勢でした。今回私が初めて知ったのは「カイ2乗」という分布でした。統計のことはまともに学習したことがなく、わからないことだらけなのですが、計算値との違いを表すために、いろいろな尺度があるのだなあと思いました。

 さて、この日の夜は講座の打ち上げをかねて宿舎でささやかな飲み会を行いました。ふだんは聞けないような話(星のこと以外も?)がたくさん話題になり、楽しいひとときでした。天文台の方との親交も一段と深まったように思います。

 25日の朝はまたもや小雪。昨晩は雨も上がり、少し星が見えていたのに長続きしなかったようです。
講座の締めくくりとして標準システムへの変換、色−等級図やHR図の作成がありましたが、はっきり言ってこの部分は機械任せ。プログラムを走らせるだけで、十分には理解が進んでいない状態です。できあがった図から星団の年齢を推定していくのですが、今回はその傾向を調べるところまでで時間切れとなってしまいました。そこで、参加者の都合が付く時期を調整して番外編を行うことになりました。4月以降の予定ですが、楽しみが持続する結果となりました。

 帰りは同じ受講者のTさんを渋川駅までお送りした後、月の撮影を行いました。昨年の11月に始めたデジタルカメラによる月の撮影で月齢2の画像だけがまだ撮れていなかったのです。道路が込んでいたため時間が遅くなってしまい、月は榛名山に沈みそうです。あわてて場所を探し、北橘村の小学校の入り口で何とか撮影することができました。夕焼けの中に榛名山が浮かび上がり、そこに月と金星が輝いている、なんて情景も撮りたかったのですが、それにはちょっと遅すぎました。 

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